マルぴょんござる!

マルぴょん それは日本古来より伝わる伝統の味…

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2010-06-16 [ Wed ]




3話









































星空を隠す遠くの物影がやがて宿のそれと分かるほど建物に近づいた時、砂漠の夜に似つかわしくない騒がしさがそこにはあった。

はじめそれを耳にした私は宿の客が雑談でもしているのだろうと思ったので、商売が繁盛してうらやましい限りだな、などとのんきなことを考えていた。

建物の2階の窓からもれる明かりが彼らを照らしている。

暗闇の中目を細め彼らを見たが、やがて近づくにつれそんな必要もなくなったとき、私の背に冷たい緊張が走った。

彼らが着るあの黒装束を、いったい誰が他の何者と見間違えるというのだろう?

闇に紛れるための黒装束だというのに、そのにじみ出るような物々しさはまるで光る猫の目のようにぎらついていた。


クロマティガードだった。


十数名ほどの隊員が宿の入口前でたむろしている。

彼らは私の存在に気がつくとコンマ数秒その会話を途切らせたが、すぐにまた話しだした。

私は何食わぬ顔で彼らの前を通りすぎると宿へと入った。

彼らの視線が私の背を貫いたのに耐えながら。


宿のカウンターでは主人が二人の男に対応をしていた。

一人は白いターバンに白いマントをまとった色黒でヒゲ面の男、もう一人は細身で神経質そうな男だった。

そんな三人を横目に私は二階へ上がろうと階段に向かったが、二階へと続く階段の手前に立つクロマティガードの隊員に行く手を阻まれた。

「待ちな、二階へは上がれない」

「なぜ」

「いいからそこのロビーで待っていろ」

彼の指さす方向に目をやると、ソファのあるロビーに宿泊している客が集められていた。

私は彼に視線を戻すと言った。

「何してるんだ一体」

「答える必要はない」

「明日に備えて寝たいんだ、古都から歩いてきたんだぜ?」

「邪魔すると余計に寝るのが遅くなるぞ」

私は頭をかくと彼に聞こえないように小さく舌打ちをした。だが不思議なことに彼は眉をしかめ私を強く睨んだ。


私はロビーへ行くとソファに身を投げるように腰をかけた。周りにいる宿泊客は6人。みなつかれた顔をしているようにみえた。

カウンターで会話をする店主と二人の男のやり取りが聞こえてきた。

主人が心配そうな顔をしてひげ面の男の顔を見ている。

「一体何事なんです?宿泊客も困惑しております」

「なに、そう心配するようなことではない。ただ我々の仕事に協力して欲しいだけだ」

協力といえば聞こえはいいが、その語尾を強める言い様は限りなく強要に近い物があった。

「もちろん…協力はいたしますが、その…これはあまりにも…」

「事が済んだら、商売がうまくいくようトゥーファ様に口添えしてやってもいい。悪いようにはせんよ」

「はぁ…それならまぁ…」

「宿泊客の名簿が見たい、あるかね」

主人はカウンターの引き出しから宿泊客の名が書かれた帳簿を取り出すと色黒の男に渡した。

ひげ面の男は帳簿をパラパラと適当にめくると、隣にいる細身の男にそれを渡した。

「チェックしろ」

「はっ」

細身の男はそういわれ手渡された帳簿を開くと、一人一人丁寧に名前をチェックしだした。

ひげ面の男はまた店主に目をやると言った。

「アリアンでちょっとした事件があってね。我々はその犯人がこちらの方面に逃げたという情報を得て、はるばるここまでやってきたのだ」

「はい。小耳に挟みました。なんでも強盗が押し入ったとか…」

ひげ面の男は鬼のような形相を見せると腰にかけていた曲刀を引き抜いた。

私は一瞬息をのんだ。

店主の首に曲刀がぴたりとあてがわれた。

「う…、な、何をなさるのです」

店主が青ざめた顔をしながら震える声で言った。

「そのいい様、受け取り方によっては強盗を取り逃がしたのは我々の手落ちだ、ともとれるのではないかな」

「そ、そんなつもりはございません」

「…その話をどこで聞いたのだ」

「旅人が口にしていたのを小耳にはさんだだけでございます」

「ふん、人の口に戸は建てられんな」

「隊長、これを」

そのとき隣で帳簿をみていた細身の男が声を上げた。

ひげ面の男は細身の男を振り返ると曲刀を鞘に収め、店主に鋭い視線を投げてから帳簿に目をやった。

「ここです」

細身の男が帳簿を指さして言った。

不審な宿泊客でもいたのだろうか?

私は自分の周りを見たが、どうみても他の宿泊客はただの旅行者にしか見えなかった。

「ほお」

ひげ面の男は細身の男から帳簿を受け取ると指をさした。

「この男はいまどこだ」

店主は困惑の表情を浮かべながらソファに座る私を一瞥し、それをひげ面の男に告げるか告げまいか迷っているように見えた。

そのしぐさを逃さなかったひげ面の男は店主の送った視線の先に目をやった。

私と目が合った。

「あいつだ」

細身の男はそれを聞き視線をたどって私を見つけると、腰にかけていた曲刀に手をかけ

「捕縛しますか」

と聞いた。

「違う」

ひげ面の男はそういい曲刀を細身の男に預けると、こちらまでやってきて私の向かい側のソファに座った。

「君のようなギルドの人間がなぜこんなところにいるのかね」

「初めまして。どちら様ですか」

私がそういうと彼は忌々しい物を見るような眼で眉根を寄せた後、踏み込みすぎた話から始めたのを反省したのか少し考えるような仕草をみせてからまた口を開いた。

「私はクロマティガードの司令官を務めている、アラッシードという者だ」

「そうでしたか。私は…」

「知っている、君のことは知っているよ。アレクサンダー・メイガス君」

「それはどうも。アレックスと呼ばれています」

「それも知っている。君のギルドの活躍は耳にするからね。それに君のところのマスターには昔よくしてもらったことがある。彼は元気かね」

「マスターに元気のなかった日などみたことがありませんよ」

「んっんっ、そうか」

形式的な愛想笑いをさらに簡略化したかのような彼の笑い方は、私と彼が言葉を交わす行為をこの世で最も無意味であるように感じさせた上、砂漠にすむ人間はその熱砂と同じように体の内側まで渇ききっているのではないかという疑問まで抱かせた。

「話を戻すようだが」

私はまた、先ほどの質問が飛んでくるのだな、と内心うんざりしていた。
彼には人を呆れさせる力があるようだった。
ゆっくりと話し厚みを感じさせる彼の声は重圧な雰囲気を持っていたが、彼の態度はその地位から来るのかどこか尊大さを持っており、聞く者に話の内容を押し付けるような不快感を与えていた。
そしてその人をあきれさせる力と不快感とがあいまって、たとえそれを指摘したとしても本人がそれに気づくことは一生ないのだろうなというあきらめを抱かせるにまで至った。

「君はそのギルドでサブマスターを務めていると聞く。そんな君がこんなところで何をしているのかね」

「仕事でアリアンに行く途中なんです」

「どんな?」

「ただの雑務ですよ。鍛冶屋まで刃油を仕入れにいかなければいけないんです。週末にギルド戦がありますからね」

「君がここにいる理由としてはもっともで筋が通っているな?」

「…」

彼はそういうと少し黙った。私の出方を伺っているようだった。私は何も言わなかった。

「君たちの活躍はよく耳にする。だが今回の件に関しては手を出さないでもらいたい。我々の面子にかけて我々の手で処理するのだ」

「今回の件?今そこで話していた強盗のことですか」

「そうだ」

「今それを知りましたよ。それに今朝私は古都にいたんです。アリアンやリンケンの情報なんて知り得るはずがない」

「人の口に戸が建てられぬ以上、噂の広がり方に際限などない。君のような古参のギルドともなるとその情報網は侮りがたい。よって君の言っていることが本当かどうかは判断しかねる」

「…気が立つのはあなたの勝手ですが、まったくの無関係者にその矛先を向けるのは間違いですよ」

「くれぐれも我々の邪魔だけはするなよ」

アラッシードはそう言い放つと私を強く睨んだまま立ち上がり、細身の男に預けた曲刀を受け取ると腰にさし直しカウンターに向かった。

「主人よ、2階の3部屋を借りるぞ。マサド副隊長、外の者を各隊ごとに部屋へ連れて行け」

「はっ」

マサドと呼ばれた細身の男はアラッシードに敬礼すると建物の外に出て隊員に号令をかけた。

私がその様子を一瞥しカウンターに視線を戻すとアラッシードが私を強く睨んでいた。

彼は階段へと歩き出すと、その手前に立っていた隊員に声をかけた。

「御苦労、宿泊客には部屋に戻る許可を出す。それを告げたらお前も部屋で休め」

「はっ」

アラッシードが階段を2階へあがるのを見送ると、彼はこちらへやってきて言った。

「だそうだ。部屋に戻ってお前らも休むといい」

宿泊客はそれを聞くと安堵のため息を漏らし、やれやれといった表情と共に階段を上がっていった。

「お前さん司令官に目をつけられてたな。目立つ行動は控えとけよ」

彼は私をみるとそういい、欠伸をしながら2階へと上がっていった。

それに続くように宿の外でたむろしていた隊員たちが宿に入り階段を上がっていった。

目の前を通った隊員だけで20名。2階で部屋を調べていた隊員がいるとなるともう数人多くなるといったところか。

しかし気になるのは彼らの装備だった。

たかだか泥棒を捕まえるだけの武装には見えなかった。


犯人は死体でもかまわないらしい。


私がタバコに火をつけると、その向かいに店主が座った。

「はぁ、勘弁してくれよまったく。あいつらは砂漠の全てが自分の庭だとでも思っているのかな」

「泥棒が捕まるまでの辛抱だ。あの様子ならすぐに捕まると思うがな」

「だといいんだが。彼らが泊まるんじゃ他の客に迷惑だ。なんでもいいからとっとと出て行ってほしいね」

「まったくだ」

私は大きく息を吸いタバコの煙をゆくらせると、近くにおいてあったガラスの灰皿でタバコを軽くたたいた。

主人に目をやると困った顔でいろいろと考えているように見えた。


まったくもって不謹慎なことだが、私は天邪鬼な性格のようで目の前にいる人間が危機に陥っている状況を見るとそれに相反する気持ちを持つことができた。彼のみせる困った表情が私に心理的ゆとりを与え、腕を組みこまねく姿が冷静さを取り戻させた。


そしていつも私はそれを持ち前の性格ではなくタバコのせいにした。


「賭けをしないか」

私が唐突に切り出すと店主は目を丸くした後眉をしかめた。

「なんだって?」

「いつまでに泥棒が捕まるか」

「は、アレックスお前さんどうかしてるぜ、こんなときに…。いやお前のことだからきっとこんなときだからこそ、というのだろうな」

私は笑って見せた。

主人は腕を組んで考えるしぐさをみせた。

「そうだな、俺も長いことここで商売をしているからクロマティガードの姿を見ることはちょくちょくあるんだが、今日ほどの武装をしてここを訪れたことはそうはない。つまり彼らは相当本気とみたね。明日明後日には捕まるとみた」

「明日か明後日、どちらだい」

「明後日にかけよう。アレックスはどう思うね」

「捕まらないに50万ゴールド賭ける」

「なんだって?」

「そのほうが夢があるだろう」

「ははっ、かもな。だがゼロをひとつ減らしてくれないか。でないともしものときにスッカラカンになっちまう」



その後私たちはいくつか言葉を交わすと、主人は残りの仕事を片付けるため席を立った。

私はタバコを灰皿ですりつぶすと2階の部屋と向かった。

白いシーツのひんやりとしたベッドが恋しかった。


階段を上がり終え、自分の体の重さを再確認したところで一息つくと薄暗い廊下を部屋へと向かった。

夢を見るより深く眠りたかった。












続く



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マルぴょん

Author:マルぴょん
■プロフィール■
主の教えこそが世界を平和に導くと信じて疑わない「マルぴょん教」の教祖にして、悪の組織ショッカーの戦闘員であるとも言われる伝説の漢である…

■所属ギルド■
エンジョイプレイRS

■ギルドにおける職位■
客員提督(ゲストアドミラル, Guest Admiral)
近年においては一般ギルド員とも言う。

■ご職業■
ウィザード

■レベル■
推定690億
(東京ドーム7個分のビタミンC)

■好きな物■
ぬくもり(あなたの)

■得意な料理■
チャーハン
ペペロンチーノ
卵納豆

■趣味■
頭突き
墓参り
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■好きな役■
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■好きな待ち■
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■好きな体位■
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