マルぴょんござる!

マルぴょん それは日本古来より伝わる伝統の味…

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2010-05-06 [ Thu ]


2話

























私はそれを見た瞬間、幻を見ているのではないかと眼を疑った。

あの砂漠の灼熱が揺らす蜃気楼なのではないかと。


だが違った。今はもう夜。

蜃気楼など見えるはずもない。

…では、夢?


いやそれも違う。

素肌の全てを余すことなくさらしだす美しい女、それは事実私の目の前に立っていた。


スレンダーなボディラインを描く褐色の肌に、ほのかな月明かりに反射する全身の水滴を宝石のように輝かせ、経験からくる落ち着きと、まだかすかに残るあどけなさからくる好奇心とを織り交ぜた優しいまなざしで私を見つめながら。


私はこのとき瞬時に理解したのだが、経験からくる女性的な落ちついた物腰は女としての妖艶な雰囲気を醸し出すが、同時にそれに相反する、どれだけ年月を経ても失われることのない少女のようなあどけなさもまた女が女足りえる大きな要因となっているのだ。

この相反するものの同居は矛盾であり、矛盾こそが美しさの根源と言えた。

長い年月を掛けて作り上げる人間という理屈の氷の中に、いつまでも燃え続ける炎のように存在する男には不可侵で不可知な女という神聖な領域。
それは男を惹きつけると同時に駆り立たせ、そして畏怖もさせる。
男が女を支配したがるのは愛のためでもあるが、同時に、自分よりも力のない者から感じ得るはずのない明瞭しがたい畏怖に対する、自分自身の矜持を賭けた挑戦のように私は思う。




そしてもうすでに、私は想像の中で彼女を抱いていた。




はりのよい褐色の肌に、雨雲のような深みのある灰色の髪と瞳。指先のつめは綺麗に整えられていて、その切っ先からこぼれ落ちる滴が水面をたたいていた。

彼女は自分の裸体を見られていることを恥ずかしがるわけでもなく、ふと現れた私に怯えている様子もなかった。

私と彼女の視線が絡み合う。

まだ出会って数秒、数分の時間も経ってはいない。

にもかかわらず、もう私たちが出会って数時間も経ったかのような、凄まじい勢いで時間が流れていってしまったかのような、私と彼女以外の存在全てが加速して、私たちは時間の底に取り残されてしまったかのような感覚。
少なくとも私は混乱していた。

私は彼女を見てから一度も瞬きをしていないことに気がついた。

それとも、彼女を見てから今それに気がつくまでの時間の流れが、一度の瞬きよりも短い時間であったとでもいうのだろうか?


私たちの間に流れるそんな不思議な沈黙を、不意に破ったのは彼女からだった。

彼女が口を開いてから声を発するまでの動きが、とてもゆっくりに、コマ送りのスローモーションのように一刹那一刹那が止まっているかのように感じられた。
だがそれは、現実に彼女はもうすでに話し始めていて、私の頭の中でそのシーンを何度も反芻しているだけのことかもしれなかった。

彼女は一瞬私から視線をはずし、口を開こうとするしぐさを見せ、また私を見て言った。
いくつかある質問のうち何から聞こうか迷っているように見えた。

「何を見ていたの」

「あ…、君を」

彼女は苦笑とも驚きともとれる表情を見せた。

「そういう意味じゃないわ。今食い入るように水面を見ていたようだけど何かあったのかと思って」

「ん、いや、ああ、星が映っていたものだから」

「星?そう珍しいものでもないように思うのだけど。なんでまた水面に手をのばしていたのかしら」

「それは聞かないでくれ、あまりにもおかしい理由だから気が違っているんじゃないかと思われそうで怖い。まさか人に見られているだなんて思いもしなかったんだ」

「そうね。ところでそこから少し下がったところで後ろを向いてもらえないかしら。私も服を着ないと気が違っているんじゃないかと思われそうで怖いわ。まさかこんな時間にこんな場所で人に見られるなんて思いもよらなかったものだから」

私はそう言われハッとすると、数歩後ろに下がり彼女に背を向けた。

彼女は湖からあがると近くの岩場においていたタオルで体を拭き、黒のチャドルを身にまとうと弓矢を背負った。

やはり彼女は先ほど私を救ったラクダに乗った女だった。

私は彼女に背を向けながらも、少しだけ振りむきその様子を伺っていた。

着替えを終えた彼女がこちらを見ると私と目が合った。

「ちょっと。後ろを向いててとしか言わなかったけど、こちらを見ないでという意味で言ったのよ」

そういいつつも彼女は決して声を荒げなかった。

「私は村の方へ戻るわ。あなたは?」

「私も宿へ戻る」

「そう。じゃあ途中まで一緒に行きましょう」

彼女はチャドルの頭をかぶらず背に垂らし、濡れた髪をタオルで拭きながら歩いた。

名をシャンディといった。



「シャンディはあんなところでなにしてたんだい?」

「私の家はね、一族の風習みたいなもので週に一度はオアシスで水浴びをしなければいけないのよ。それでいまそうしてたわけ」

「こんな時間じゃなければいかいのかい」

「別に夜にしなければいけないというわけではないのだけど。私、夜の星空が好きなのよ」

シャンディはそういい夜空を見上げた。

「どこまで続くのか分からない漆黒の空に、震えるように輝く星々は、その輝きをもって一体誰に何を伝えようとしているのかしら。私たち人類がこの世に誕生する以前から行われてきた自然の営みを、たかだか数十年生きただけのちっぽけな一人の人間が、それを理解しようだなんていうのはちょっとした傲慢なのかもしれないわね。私たちにできることはせいぜい星と星とを繋げて星座を描くことくらいのものかしら」

「人の言葉を理解できるのが人であるのと同じように、星々の輝きを理解することができるのは星達しかいないのかもしれない」

「きっとそうね」

シャンディは夜空に手を伸ばすと、人差し指と親指で星をつまむしぐさを見せた。

「湖を背に星空を眺めると、この世の全てが星空になるのよ。まるで私自身も星になったんじゃないかと思えるの」

彼女が夜空の星々に抱く思いと、私が夕焼けを、湖面を眺めてめぐらした考えと、いったいどれだけの違いがあるというのだろう。
私が水面を鏡に世界を覗き込んでいたのに対して、彼女はその鏡を夜空にしただけのことではないだろうか。

そんな彼女に私は親近感を覚えずにはいられなかった。

私は、先ほどめぐらしていた考えを話してみると、彼女は興味深く聞き深く頷いていた。

「あなたも変わったこと考えるのね」

「お互いにね」

「ふふ、そうね」



私たちは村の中心の広場まで来た。

巨大なモニュメントが静かにそびえ立っている。

あたりには誰もいなかった。

私たちは足を止めるとシャンディはまた空を見上げた。

「今私たちが見てるこの星の輝きって、星によっては何年も前に放たれた光かもしれないのよね。この瞬間その星はもう存在しないかも知れないのに」

「・・・・・・」

「まるで過去の思い出ね、この瞬きは」

私は彼女を見た。

彼女も私を見た。

あたりは静かだった。


「私、ここの村の北東にあるバーで働いているの。時間があいたら寄ってね」

「そうさせてもらおう」

「おやすみアレックス」

「おやすみシャンディ」


私たちはそこで別れた。

私は宿へと向かった。





途中、一度その足を止めた。


・・・宿へ戻るのをやめてこのまま彼女のバーまで行ってしまおうか?


・・・いや、私の悪い癖だ。刃油を仕入れた帰り道に寄るべきだろう。


そう自分に言い聞かせた。











このとき私は、自然と沸き起こったバーへ行きたいという衝動に正直に従うべきだったのかもしれない。


後から考えると、このとき私が選んだ宿へ戻るという選択肢が自分自身を不幸に貶めたと思えてならない。











私が宿に戻ったとき、私はすでにこの事件に巻き込まれていた。
















続く








スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://malupyon.blog53.fc2.com/tb.php/44-7d3649cd

 | HOME | 

2017-11

  • «
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • »

あなたは誰?

マルぴょん

Author:マルぴょん
■プロフィール■
主の教えこそが世界を平和に導くと信じて疑わない「マルぴょん教」の教祖にして、悪の組織ショッカーの戦闘員であるとも言われる伝説の漢である…

■所属ギルド■
エンジョイプレイRS

■ギルドにおける職位■
客員提督(ゲストアドミラル, Guest Admiral)
近年においては一般ギルド員とも言う。

■ご職業■
ウィザード

■レベル■
推定690億
(東京ドーム7個分のビタミンC)

■好きな物■
ぬくもり(あなたの)

■得意な料理■
チャーハン
ペペロンチーノ
卵納豆

■趣味■
頭突き
墓参り
回転寿司

■好きな役■
リーチ
タンヤオ
ホンイツ

■好きな待ち■
ペンチーピン

■好きな体位■
ひみつ

■熱いラーメン■
が食べたい

カテゴリ

てんきよほう

ブログパーツ『天気予報』:http://flash-scope.com/

銀河英雄伝説名言録



present by 田中芳樹:徳間書店「銀河英雄伝説」

検索フォーム

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。