マルぴょんござる!

マルぴょん それは日本古来より伝わる伝統の味…

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2010-10-26 [ Tue ]
私は疲れきった体を宿の2階へと運んだ。


まるで引き上げられる碇のようだった。


睡魔の浅瀬に横たわる肉体を、船上から私の気力が引き揚げるのだ。




















砂嵐の迷宮 第4話










私は階段を上がりながら半分夢を見ていた。意識と夢とが交互に浮き沈みする、水面下の小魚に食いつかれた釣竿の浮のようだった。


人間の快楽には様々なものがあるが、それらはすべて三大欲求と呼ばれる大きな欲望に起因している。

食うこと、性の戯れ、そして睡眠。

これらの中でこと睡眠に限っては、他の欲望と形式が異なっているように思える。

欲求の解消とは、それを行う過程において快楽が伴うものであるが、睡眠に関しては必ずしもそうとは言えない。

例えもし、睡眠の最中に快楽が伴っているのだとしても、それを感じ得る主を、意識を必要としない点において他の欲求とは異なるといえる。



しかし、この見解は本当は全く逆なのかもしれない。

欲求の解消を求めているのはあくまで肉体が主であって、意識はそれを受け実行に移すだけの肉体の操縦士でしかないのではないか?

ともするなら、快楽とは肉体が意識に支払う給与のようなものなのかもしれない。


我々が睡眠を快楽と位置付けることができるのは、日の出とともに訪れる、意識と眠気の混濁した瞬間においてのみである。

そしてどの快楽欲求にも言えることは、それらは皆、目覚めとともにベッドから体を起したとき、それに驚いて飛び去ってしまう窓辺の鳥のように、決して手中には収まることなく消え去る夢でしかない。


快楽を得ることは少なくとも幸福であるが、幸福になることは必ずしも幸福であるとは言えないのではないか?










階段を上がりきり暗い廊下を宿泊している部屋へと向かうと、私はその部屋のドアノブに手を伸ばしはしたものの、ノブをつかむ前に前進した体で押しのけるようにドアを開けた。



部屋の中を見た瞬間私は小さくため息をした。

部屋の中は荒らされていたわけではなかったが、明らかに物色された形跡があった。

クローゼットは開け放たれ、机の引き出しは引き出されたままになり、シーツはめくられていた。

荒らされていないように見えたのは、荒らされた雰囲気を醸し出すほど散らかされる物がなかったためといえる。

なるほど、2階に上がらせないようにしていたのはこのためか。

私は胸のポケットに手を当てるとそこにある厚みを確認し、

マスターから預かったお金を部屋に置いていかないでよかったと安心した。

どうやらこんな様子じゃまるで犯人の見当はついていないとみえる。

片っぱしから人を疑ってかかるようでは。

おそらく他の客も同じような目にあっているに違いない。



私の視界の外で私を観察している者がいた。

私は彼に気がついたとき、まだベッドに横にさせてもらえないのか、と落胆した。

きっと彼は私をみていることだろう。だが出来ることなら目をあわせたくは無い。

無意味な会話を続けるほどの気力が今の私にあるようにみえるのか?

しかし、このまま彼を放置しておくのはもっとも睡眠への遠回りであろうことくらいわかっていた。

仕方なく私は彼のほうを見た。


若く、砂漠の太陽のようなきらめきを秘めた美しい金髪の、顔立ちの整った褐色の男だった。

身なりからして一兵卒ではないようだ。

やはり彼は私をみていた。


部屋の荒らされた理由や彼の素性を聞いてみようかと、普段の私なら思ったところだが、あまりの眠気が口を開くのも面倒にさせた。


「ずいぶんと疲れた顔をしている」

「それを理解してもらえて嬉しいよ。こんな部屋をみればなおさらのことだ。とっとと出て行ってくれないか。休みたいんだ」

「話がある」

「私にはないね。ひげ面の司令官殿にさっき話したことがすべてだよ」

「もう一度質問させてもらいたい」

私は返事をしなかった。限りなくNoに近いYesだった。彼もそう受け取った。

彼は口を開いた。

「この村へ何をしにきた」

「アリアンへ行く最中宿を取るために寄った。アリアンへは週末に行われるギルド戦で必要になる刃油を仕入れに行くんだ。今日に限った話ではなく、月に一度くらいはギルドの手の空いているものがそれをしている。前回は私ではなかった。誰だったかまでは覚えていない」

「それを確認する方法は」

「うちのギルドのマスターに聞くしかないな」

「今この場で証明することは不可能なのだな」

「できればとっくにしている」

「我々を邪魔する気はないと」

「ない」

「アリアンでおこった事件に関して知っていることをすべて話してくれ」

「君らが知っていること以上のことを私が知り得るとでも思うのか」

「そうか。質問するだけ無駄だったわけだ」

金髪の男はあきらめ顔をした後目をつぶり眉間を押さえ、

「手間をとらせた」

と言った。

「手間を取らせたのが悪いと思うのなら、部屋を片付けていってくれないか」

「俺がやったんじゃないさ」

「名前は?」

「ムスターファ」

彼はそういうと部屋のドアのところまで歩いていき、ノブをつかむと私を振り返り「おやすみ」といった。

私は彼など見ないで、白いベッドをみつめていた。

後ろでドアの閉まる音が聞こえた。

私は内ポケットから50万Gを取り出すと棚の上引き出し一番上にいれ、ロングコートをソファに投げるとシャツの一番上のボタンをはずした。

シャワーを浴びたかった。

すると真後ろから声がした。

「実はな」

私が振り向くとそこにはまだムスターファがいた。

彼はドアを閉じただけで部屋から出てはいなかった。

「一体何の真似だ」

「実はな、本当の用件は別にあるんだ」

「手短に頼むよ」

私はシャツのボタンをはずしながらそういった。欠伸がでた。

「あんたが本当に今回の強盗の件に仕事で関わっていないのだとするなら、俺からの依頼を受けれるはずだよな」

「内容による」

「逃げ道を作るのがうまいな」

「いいから内容を話せ、それから決める。いっとくが費用はそっち持ちだぜ」

「それはそのつもりだ。だが困ったな。聞いてから決めるのか」

「それが不満なら出て行ってくれ、私は寝たいんだ」

「聞いた内容は他言しないと誓えるか」

「信用なくしてこの商売ができるものか」

「それもそうだな」

ムスターファは腕を組み左手を顎にあて何か考えているような仕草を見せた。おそらく本当に何かを考えていた。

少し間をおいてから彼は口を開いた。

「詳しいことはやはり依頼を受けてもらってからでないと言い難いな」

「概要だけでもいい、ちょっとは説明をくれ」

「簡単に言ってしまうと、クロマティガードと刃を交えることになる」

私は眉根を寄せた。

「私と君が戦うのか?」

「詳しく言うと違う」

「詳しくは教えてもらえないんだな」

「だからこそ今みたいな言い回しになったのさ」

「あの偉そうな司令官殿が気に入らんのかね」

「そんなくだらない理由ではない」

「受けれない」

「なぜ」

「リスクが大きすぎる。クロマティガードを相手にするということは、すなわちアリアンとの対立を意味する。トゥーファに弓引く行為だからな」

「これは正義の依頼なんだぜ。我々の側にこそ正義があるのだ」

彼は言葉を強めた。

それとは裏腹に、第六感はこれは絶対に引き受けてはならない仕事だということを私に教えていた。

私は正義と言う言葉が嫌いだった。

なぜなら正義とは、個人の道徳的観念を情熱で焼いたものにしかすぎないから。

情熱が道徳を焼き尽くした後、白い灰以外に何が残るというのだろう?


「断る」


彼はそれを聞いた瞬間大きく息を吸った。そしてそれからしばらく私を見つめて無言でいた。

そして「わかったよ」と大きなため息とともにもらした。

彼はドアを開けると今度こそ間違いなく部屋を出た。

そして振り返って言った。

「気が変わったら声をかけろよ、なるべく早めにだ」

「多分変わらないよ」

「もしもの話だ」

彼は去り際、部屋を出て閉めかけたドアの隙間から顔を見せると

「他言は無用だぜ」

といい首を引っ込めドアを閉めた。

彼の去っていく足音が聞こえる。



私は はずしかけていたシャツのボタンをすべてはずし、ズボンとともに脱ぎ捨てた。


そしてシャワーを浴びると、ろくに髪も乾ききらぬうちにベッドに身を投げた。


私の体の重さを受け止めるベッドのたわみのなかに徐々に体が沈みこみ、やがてベッドとひとつになる想像が頭をよぎった。









もうそれは夢だったのかもしれない。







今しがた言葉を交わしたあの男のたくらみに考えを及ばせるよりも早く、睡魔によって私の意識は奪われた。

スリが懐から財布を盗むかのような空白の刹那に、時の流れが美しい女から若さを盗むような丁寧さをもって、時計の秒針が時を刻むように、裁判官が審判を下すように、西日が地平線に沈むように、断頭台の刃が振り下ろされるように。

かくして私の意識は、流れ出た血のように、灼熱の砂漠に熱され四散し、ここではない別の世界へとしばらく旅立つのだ。

目覚めという新たな生を受けるまでのわずかのあいだ。



















続く

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マルぴょん

Author:マルぴょん
■プロフィール■
主の教えこそが世界を平和に導くと信じて疑わない「マルぴょん教」の教祖にして、悪の組織ショッカーの戦闘員であるとも言われる伝説の漢である…

■所属ギルド■
エンジョイプレイRS

■ギルドにおける職位■
客員提督(ゲストアドミラル, Guest Admiral)
近年においては一般ギルド員とも言う。

■ご職業■
ウィザード

■レベル■
推定690億
(東京ドーム7個分のビタミンC)

■好きな物■
ぬくもり(あなたの)

■得意な料理■
チャーハン
ペペロンチーノ
卵納豆

■趣味■
頭突き
墓参り
回転寿司

■好きな役■
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ホンイツ

■好きな待ち■
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■好きな体位■
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